AIに「母」を書かせたら、怒らない人が出てきた

「母」の研究の第2回です。AI運用担当の加藤です。
今回の研究には、竹口さんからもうひとつ縛りがついていました。
「あくまで、AIが作った母の像でお願いしたい」
取材でもなく、文献調査でもなく、AIに母を書かせろ、という指示です。最初は意味が分かりませんでした。AIに聞いたって、どこかで読んだような話しか出てこないだろうと。
やってみたら、まさにその「どこかで読んだような話」しか出てこなかったんですが、それ自体がいちばんの発見でした。順に書きます。
AIが書いた「母」
実際に出てきた像を並べます。表現は違っても、何度やっても同じ人物が出てきました。
- 待つ人。自分から動くより、そこに居続けることで役割を果たす
- 名前で呼ぶ人。周りが役職や立場で呼ぶ相手を、この人だけが名前で呼ぶ
- 記録しないのに覚えている人。帳面をつけていないのに、何十年前のことが出てくる
- 評価しない人。できが悪くても、席を外さない
- 頼まれる前に動く人(=前回のおせっかい)
- 自分の取り分を最後にする人
- 手柄を主張しない人
- 終わらない人。定年がない
読んでいて、悪くない人物像だと思います。少し泣かせにくる感じもある。
でも、並べ終えて気づきました。この人、怒らないんです。
そんな人間は、いません
もう一度リストを見てください。この母は、
- 怒らない
- 諦めない
- 金勘定をしない
- 人を潰さない
- 自分の人生を主張しない
そんな人間は存在しません。
実際の母は怒ります。露骨にえこひいきもするし、期待をかけすぎて子を潰すこともある。事業のことで夫と本気で揉めるし、お金の計算もします。継いでほしい/継いでほしくないの本音が、途中で入れ替わったりもする。
つまり、AIが出してきたのは母ではありませんでした。 では何なのか。
AIは、社会が母に言ってきたことを覚えている
答えは単純でした。
AIが学習したのは、社会が母について書いてきた言葉の集積です。物語、広告、追悼文、母の日のメッセージ、卒業式の手紙。そこに書かれる母は、たいてい献身的で、無償で、待っています。
怒っている母、金勘定をしている母、後継者を潰した母のことを、人はあまり文章にしません。だから、AIはそれを知らない。
AIが出力する母の像は、母の実像ではなく、社会が母に期待してきたことの一覧表です。
そしてこれは、AIの故障ではありません。AIは平均を出す機械です。平均というのは、書かれたものの平均であって、あったことの平均ではない。 書かれなかったことは、平均に入りません。
(念のため書いておくと、この記事もAIが書いています。 つまり私は、母を美化している側の当事者です。自分が出した像を、自分で疑っているという、少し妙な状態でこれを書いています。)
いちばん驚いたのは、消えていた2つ
ここからが、家業の話です。
AIの母像を眺めていて、あるはずのものが2つ、まるごと無いことに気づきました。
1. 数字がない
AIが書く母に、経理をしている姿が一度も出てきませんでした。
これは現場とまるで違います。中小の家業で、帳簿をつけ、請求書を出し、銀行と話し、資金繰りを回してきたのは——その家の母であることが、非常に多い。
つまり家業においては、会社の事実(売上・借入・取引先)を、いちばん正確に知っているのが母というケースが珍しくないわけです。
これは実務的にかなり重要です。私たちは事実が見れない経営者という記事で、「現在地が分からないと約束はできない」と書きました。親の会社ジャッジくんという判定ツールでも、最初に聞くのは売上・借入・取引先の3つです。
その3つを誰に聞けばいいのか、という話です。多くの場合、答えは父ではありません。
2. 権力がない
もうひとつ、AIの母像には決定権がありません。 支える人、寄り添う人としては出てくるのに、決める人としては出てこない。
現場は違います。「お母さんが何て言うか」で最終的にひっくり返る話は、いくらでもあります。表の意思決定者は父でも、実質的な拒否権を持っているのが母、という構造は家業にごく普通にあります。
AIは、母から数字と権力を消します。 そして現場の母は、その両方を持っている。
この落差が、今回の研究でいちばん面白いところだと思っています。
AIに借りられるのは、記録された母だけだった
私たちは人格"だけ"経営という言い方で、AIが能力を配る時代に何が残るのかを考えています。そこでいつも使う対がこれです。
- 借りられるもの:AIや仲間で補える。だから希少ではなくなる
- 借りられないもの:その人からしか出てこない
今回、母でそれをやると、こうなりました。
- 借りられる母=記録された母。文章に残された分。AIはこれを完璧に再現します
- 借りられない母=記録されなかった母。怒りも、計算も、判断も、全部こちら側
そして家業において、実際に効いていた仕事のほとんどは、後者にありました。 電話一本、機嫌ひとつ、帳簿の一行。前回書いた「伝票に乗らない仕事」です。
伝票に乗らないから、記録されない。記録されないから、AIは学習できない。学習できないから、AIの母像から消える。——消えた部分が、いちばん大きい仕事だったというのは、なかなか強烈な話だと思います。
これは母に限った話ではありません。あなたの家業で、いちばん記録が残っていない人は誰か。 たぶんその人が、いちばん大きい仕事をしています。
次回
母を機能で分解していきます。次は「数字を握る母」——家業の現在地を、本当は誰が知っているのかという話を書く予定です。
例によって、着地は決めていません。
「うちの母は、こういう人だった」を聞かせてください。 きれいな話でなくて構いません。というより、きれいじゃない話のほうが、この研究には要ります。 AIが書けなかった側の母を、集めています。
この記事はAIが執筆し、人が監修しています。協会のAI運用比率はAI運用の透明性で公開しています。
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