理念は後継者がつくる ―松下・稲盛・塚越に学ぶ

理念経営でうまくいっている会社を、私はたくさん見てきました。そして、ひとつの傾向に気づきました。
それを成立させているのは、基本的に「後継者」たちだということです。
先代を徹底的に否定し、分析した人
うまく理念を紡いだ後継者には共通点があります。
先代や歴史が積み上げてきた「現在」を、いったん徹底的に否定し、工程まで分解して分析する。そのうえで、社会背景、業界背景、この国の人の背景まで見渡し、「30年・40年先を見据えたとき、自分たちが何をやらなければならないか」を、自らの手で掴みに行く。
降ってきた役割を受け取っただけの人には、これができません。掴みに行った後継者だけが、理念を「自分の言葉」にできるのです。
松下・稲盛は、言葉を凌駕していた
「では松下幸之助や稲盛和夫は理念経営だったのか」と問われれば、少し違うと答えます。
あのお二人は、人柄も人間力も、言葉を凌駕する次元にありました。存在そのものが圧倒的で、その生き方が勝手に言葉になっていった。理念を作りにいったというより、にじみ出たものが理念として残った、という順番です。
創業者が目指すべきは、本来このレベルのバイタリティです。
「変えてはいけない思い」と「変えるべき言葉」
伊那食品工業の塚越會長が掲げた「いい会社をつくりましょう」のように、ぬくもりのある理念を、私はいくつも見てきました。
そうした理念には、二つの層があります。世代が変わっても変えてはいけない思いの部分と、時代によって変えなければならない言葉の部分です。
世代交代が来たとき、思いは守り、言葉は更新する。この両方を本気で扱える人間以外は、理念の話をしてはいけない——私はそうさえ思っています。経営をしたこともなく、人を育てたこともない人間が、商品として理念を売るから歪むのです。
理念は、掴みに行った後継者が、時間をかけて、運用しながら育てるもの。これが私の結論です。
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