成功する後継者育成プランと失敗事例の教訓

日本における家業承継は、少子高齢化や経済構造の変化によって多くの事業者が後継者不足に陥る一方、承継に成功したケースでは大きく事業を成長させる事例も存在します。その違いはどこから生まれるのか──本稿では「後継者育成プラン」のポイントと、なぜ失敗が起こるのか、さらには失敗から学べる教訓を詳しく解説します。
1. はじめに:後継者育成が注目される理由
近年、中小企業・小規模事業の廃業リスクが高まる中で、後継者育成は急務となっています。中小企業庁の調査(※1)によると、2025年頃には約245万社の中小企業経営者が70歳を超えると推計され、そのうち半数以上で後継者が決まっていないと報告されています。この大きな波は「大承継時代」とも呼ばれ、早急な対策が求められています。
とはいえ、単に「家業を継ぐ人材を決める」だけではスムーズに承継できないのが現実。後継者がしっかりと経営者としての力量を身につけ、組織内外の信頼を集め、時代に適した変革を起こす ための仕組みづくりこそが、後継者育成プランの要と言えます。本コラムでは、成功に向けたポイントと、失敗を招きがちな落とし穴をまとめ、そこから得られる教訓を紐解いていきます。
2. 日本の家業承継の現状と後継者育成の重要性
中小企業庁『事業承継ガイドライン』(※2)では、「後継者不足」を主要な課題の一つとして挙げています。特に地方圏では、後継者が都市部へ移住してしまい、家業を継ぐ人材が見当たらないケースも多く見られます。しかし、仮に後継者が存在しても、
- 適切な育成期間が取れない(先代経営者が急逝、健康上の問題など)
- 承継準備が整わないままトップ交代(法人税務・相続対策の未整備など)
- 後継者本人の意欲・スキルが不十分
といった理由から、承継に失敗するリスクは依然として高いのが現状です。
一方、“後継者をどのように育てるか”を体系的に考え、十分な時間をかけて準備をしている企業ほど、承継後の成長率が高い とする調査結果(※3)も存在します。まさに、後継者育成こそが企業の未来を左右するといっても過言ではないでしょう。
3. 成功する後継者育成プランのポイント
では、具体的にどのようなプランを設計すれば、後継者は経営者として順調に育ち、承継後の企業発展につなげられるのでしょうか。ここでは、代表的な5つのポイントを取り上げます。
3-1. 育成の早期スタート
1) 計画的なスケジュール設定
後継者育成は、短期間で終わるものではありません。3〜5年ほどの中期スパン でスケジュールを立てることが理想です。例えば、最初の1〜2年は現場業務や経理の基礎を学び、次の段階で一部部門のマネジメントを任せる──といったようにフェーズを分けて計画的に進めると、後継者の成長に合わせて責任範囲を拡大できます。
2) “気づいたときには遅い”を避ける
先代が高齢化してから急に後継者を指名しても、ノウハウ移転や人脈づくり、社内外の信頼醸成に十分な時間がとれません。「まだ大丈夫だろう」という油断が結局は承継失敗へとつながるケースが多いことを、経営学の研究や各種データが示唆しています(※4)。「早すぎるかな」くらいのタイミングで準備を始めるのがベストです。
3-2. 経営基礎と実務経験の融合
1) 座学だけでなく、現場経験を積ませる
MBAやビジネススクールで経営を学ぶことは一定の効果がありますが、それだけでは現場の空気感やリアルな課題への対処は身に付きません。現場の管理職やプロジェクトリーダーなど、具体的な職務を通じて組織全体の動きを肌で感じることが重要です。経営基礎(理論)と実務経験をうまく融合させるプランを用意しましょう。
2) 財務・人事・マーケティングの基礎
「後継者として押さえておくべき3大分野」として多くのコンサルタントが挙げるのは、財務・人事・マーケティング です(※5)。これらの基礎知識をしっかり身につけ、経営状況を分析し、人材配置・採用戦略を考え、顧客や市場動向を読み取る力を養うことが、トップ就任後に大きな差を生む鍵となります。
3-3. 現場・組織・地域とのコミュニケーション
1) 社内外のステークホルダーとの対話
後継者が孤立してしまうと、意欲やアイデアがあっても組織を動かすのは容易ではありません。現場の従業員はもちろん、幹部、取引先、金融機関、地域コミュニティなど、多岐にわたるステークホルダーとの対話を丁寧に行うことで、後継者本人が“顔”として認知され、承継後の混乱を最小限に抑えられます。
2) 信頼関係の醸成
特に親族内承継の場合、「先代のカリスマ性」が強い企業では、社員が先代への忠誠心を持ち続けるあまり、後継者が思うように動きづらい場面が出てきます。そこで大事なのが、後継者自身が目標やビジョンを明確に示し、日常のコミュニケーションで積み重ねた行動で信頼を勝ち取る こと。口先だけのリーダーシップでは組織は動きません。
3-4. 外部ネットワークの活用
1) コンサルタントや専門家の力
税務や法務、M&A、相続といった複雑な問題に直面することも多い家業承継。専門家やコンサルタントとの連携を適切に行うことで、後継者は“泥臭い事務処理”に時間を割きすぎず、事業や人材マネジメントに集中できます。
2) 異業種や同世代リーダーとの交流
後継者同士が意見交換できる場や、地方自治体・商工会議所などが提供する若手経営者向けの勉強会などを活用すると、社内にはない視点やノウハウを得られます。これは後継者の視野拡大だけでなく、将来的なコラボレーション機会を生むことにもつながるため、有効な育成策の一環となります。
3-5. 承継後を見据えた継続的フォローアップ
1) トップ交代だけで終わらない
後継者が正式に経営トップに就任した後も、すぐに「ではあとは任せた」と手を引いてしまうと、社内の動揺や想定外のトラブルが生じやすくなります。数カ月から1年程度は先代と併走する形でサポートするケースが望ましいとするコンサルタントもいます。
2) 人的・財務的バックアップ
後継者に経営権が移ってからも、必要な投資や銀行との折衝、税理士との契約更新など、会社を取り巻く環境は刻々と変化します。そのタイミングで後継者が新しい判断を行いやすい体制(例:幹部や外部専門家との定期ミーティング)を整えておくことが、安定成長を促します。
4. よくある失敗事例とその原因
ここでは、後継者育成がうまくいかずに事業承継が失敗してしまった事例から、代表的なパターンを紹介します。いずれも日本ファミリービジネス学会の講演録や、中小企業の経営者へのインタビュー調査(※6)などで言及される、比較的頻度の高い失敗パターンです。
4-1. 時期尚早の“丸投げ”
先代が高齢になり、突如「明日からお前が社長な」と後継者に丸投げするケースです。社内外の信頼形成やノウハウ継承が不十分なままトップになった結果、従業員や幹部が後継者を認めず内紛が起きる、取引先や金融機関が不安視して融資に難色を示す、といった問題が噴出します。
4-2. 親族間・幹部間の対立
後継者候補が複数いて、親族内で「誰を後継者にするか」で揉めるケースや、幹部が「今まで会社を支えてきたのは自分」と主張して後継者と対立するケースなど。トップが複数存在する状態になり、社員も指示系統が混乱して業績悪化に陥る場合があります。
4-3. 外部環境の変化への無策
例えば、IT化やDXが進む中で、先代のやり方をそのまま踏襲したり、業界構造の変化に対応せずにいると、競合他社にシェアを奪われ業績が急落してしまうことが。後継者が新しい経営戦略を打ち出せない・先代と衝突して改革に乗り出せない といった内外要因が絡むケースです。
4-4. 後継者本人のモチベーション不足
そもそも後継者が「本当は家業なんて継ぎたくない」と思いながら仕方なく社長になると、リーダーシップや経営意欲が湧かず、結局うまくいかないことが多いです。社員からも「やる気が感じられない」と見られ、組織全体が低迷してしまう事例が数多く報告されています。
4-5. 財務・税務・法務の軽視
相続・贈与の手続きが滞っていて株式が分散してしまい、後継者が実質的に経営権を握れず紛争が起きる。また、簿外債務などが後から発覚し、後継者がその対応に追われるうちに倒産へ──といった具合に、しっかりと専門家の助力を得なかったがために大きなトラブルへ発展するケースも後を絶ちません。

5. 失敗事例から学べる教訓
先に挙げた失敗事例からは、次のような共通の教訓が導き出せます。
5-1. 経営方針やビジョンの共有
社内外の人々に「自分は何を目指しているのか」を明確に示し、先代や幹部、従業員とのあいだで目標や方向性をすり合わせる 必要があります。これを怠ると、どんなに優秀な人材でも組織全体をまとめられず、意思決定が滞ります。
5-2. 早期の専門家連携
財務・税務・法務の問題は想像以上に複雑化しやすいものです。後継者が経営ノウハウを学びつつ、弁護士や税理士、コンサルタントらとのネットワーク を確立することで、突発的なリスクに備えられる仕組みを作っておくべきです。
5-3. 後継者本人の「自走力」醸成
家業だからといって親の背中をずっと追いかけるだけではなく、自らリーダーシップを発揮して組織を牽引 できる実力と意志を養うことが重要です。「せっかく継がされるのだから、自分のやりたいことも実現しよう」という主体的な姿勢が、成功への最大の原動力となります。
6.成功事例:後継者育成プランの実践例
1. キッコーマン株式会社(千葉県野田市)
企業概要
- 創業:1917年(複数の醤油醸造家が合同出資し、「野田醤油株式会社」を設立)
- 業種:醤油・調味料等の製造・販売
- 従業員数:連結ベースで約8,000名超(2023年時点)
後継者育成のポイント
- 複数家系が共同で承継を進めた歴史
キッコーマン(当時の野田醤油)は、茂木家・高梨家・小出家など複数の醤油醸造家が集まって誕生しました。もともと“家業”の集合体だったため、後継者を選定する際には複数の家系・株主の意見を調整しながら進めてきた経緯があります。- 早期から“経営者候補の留学”を推奨するなど、多彩な経営手法を学ばせる土壌があった。
- “海外でのビジネス経験”を重視
1960年代以降、醤油を海外に広める戦略が掲げられ、若手幹部や後継者候補が積極的に欧米市場開拓に携わったことが大きな転機となりました。- 次世代リーダーが“グローバル視点”を身につけることで、国際展開に向けた体制を整え、醤油の世界進出を成功させた。
- 先代・前経営陣のサポートと組織的サクセッション
戦後から高度成長期にかけて、複数の同族出身者をはじめとする経営陣が二人三脚で管理業務を行い、後継者を段階的に育成した点も大きい。カリスマ個人の独断ではなく、組織として「どう育て、どう承継するか」を議論する文化が根付いていたことが、円滑なバトンタッチを支えた要因といわれています。
地域・企業へのインパクト
- 同族経営の強みを活かしつつ「海外展開」という新たな経営戦略に成功したことで、国内外の醤油市場を席巻。
- 千葉県野田市を中心とする地元の雇用や関連産業を長年にわたり支え続けている。
- 組織的・計画的に後継者を育成するモデルケースとして、他の同族系メーカーからも注目されている。
参考
- キッコーマン公式サイト内 企業情報・沿革
- 『キッコーマン百年史』(社史)
- 経済産業省関連資料(海外進出企業事例)
2. 星野リゾート(長野県軽井沢町)
企業概要
- 創業:1914年(星野温泉旅館として開業)
- 業種:旅館・ホテル・リゾート運営
- 代表的施設:星のや軽井沢、界シリーズなど
後継者育成のポイント
- 創業家4代目による事業改革
星野佳路氏(創業家4代目)は、スタンフォード大学経営大学院(MBA)で学んだのち、旅行代理店勤務などを経て家業へ戻ってきました。当初の星野温泉旅館は時代の変化に追いつけず、経営不振に陥っていたとされます。- 海外で学んだ最新の経営理論やマーケティング手法を導入することで、旅館事業から「リゾート運営会社」への事業モデル転換を図った。
- 外部人材・ノンファミリー幹部の登用
従来の旅館業界にはなかった「ブランド戦略」や「プロジェクトマネジメント」を実践するために、外部から優秀な人材を積極採用。創業家だからといって自分たちだけで経営を完結しようとせず、多様なプロフェッショナルが活躍できる仕組みを作ったことが特徴的です。- 星野佳路氏自身が、先代(父)の経営スタイルをすべて踏襲するのではなく、新しい血をどんどん取り入れてイノベーションを促進した。
- 段階的なトップ交代とブランド再構築
後継者として復帰してすぐに全権委任を受けるのではなく、数年間は部分的な改革を進めながら経営基盤を整えた後に本格的に全社を率いる形を採用。祖業の「温泉旅館」ブランドを残しつつ、「星のや」「界」「リゾナーレ」など新ブランドを展開することで、従業員や顧客に“新旧融合”の姿勢を示した。
失敗リスクと克服
- 大幅な事業改革 に対して、古参従業員や地元関係者からの反発があったと言われる。
- しかし、「軽井沢地域の観光活性化」という大義や、段階的な情報共有・説明を怠らず行うことで、最終的に地域や従業員からの理解を得ることに成功。
地域・企業へのインパクト
- 長野県軽井沢を拠点とするリゾート・観光産業の活性化を牽引。
- 独自のブランド戦略で星野リゾートを全国規模、さらに海外マーケットにも展開。
- 後継者が外部経験や学びを活かし、組織的に改革を進めた“成功例”として、観光業界の事業承継セミナーなどでもたびたび取り上げられる。
参考
- 星野佳路氏の講演録(各種メディア)
- 長野経済研究所の観光産業レポート
- 星野リゾート公式サイト
3. ヤマト醤油味噌(石川県金沢市)
企業概要
- 創業:明治30年(1897年)
- 業種:醤油・味噌・発酵食品の製造販売
- 所在地:石川県金沢市大野町
後継者育成のポイント
- 現社長(6代目)が先代から“段階的に継承”
ヤマト醤油味噌では、先代(5代目)が健康上の問題で早期に引退を検討した際に、後継者候補だった息子(当時30代)を専務から代表取締役へと段階的に昇格させる計画を作成。- まずは専務として工場管理・商品開発を担当し、製造現場や流通ルートを熟知する期間を2年ほど確保。
- その後、財務や人事の責任者も兼任して経営全体を把握し、5代目がアドバイザー的立場で支援。
- “発酵文化”を武器にした新ビジネス創出
後継者がトップに就任してからは、金沢の発酵文化を観光につなげる「発酵ツーリズム」や、店舗併設のカフェで味噌・醤油を使ったスイーツを提供する等、新しい発想を次々に導入。- それまでの「地元向けの老舗醤油屋」から、観光客・EC販路向けのブランド開発へと業容を拡大。
- 事業承継税制・専門家の活用
石川県商工会議所や金融機関の支援により、株式の相続税・贈与税を軽減する事業承継税制を適用。さらには税理士・弁護士も交えて事業承継計画書を作成するなど、リスク要因を整理して着実に承継を進めた。
地域・企業へのインパクト
- 金沢の“食文化”を支える老舗として、年間を通じて観光客を集客。
- 工場見学や味噌作り体験、カフェなどを通じた雇用拡大や地元食材の仕入れ増に貢献。
- 後継者が一方的に先代のやり方を否定せず、“守る部分”と“変える部分”をうまく分けて現代化を推進した好例。
参考
- ヤマト醤油味噌公式サイト https://www.yamato-soysauce-miso.com/
- 北國新聞・石川県商工会報道
- 中小企業庁関連事例集「地域の老舗を次世代へ」
4. 高千穂牧場(宮崎県都城市)
企業概要
- 創業:1953年
- 業種:酪農・食肉加工・観光牧場経営
- 所在地:宮崎県都城市吉之元町
後継者育成のポイント
- 内部昇格だけでなく“外の知見”も融合
創業家の長男が後継者候補として、大学卒業後しばらく他社で実務経験を積んでから牧場経営に携わった。外部勤務の際に学んだマーケティングやIT管理を、後継者育成プランに組み込んだ。- 牧場管理や畜産ノウハウは先代や古参社員から学び、販売・広報戦略は外部セミナーやコンサルと連携するスタイル。
- 観光+酪農の複合化に挑戦
後継者が「酪農だけでなく、観光牧場として体験型アトラクションを増やす」施策を打ち出し、地元自治体や旅行会社と協力して集客を拡大。さらにオンラインショップでチーズやソフトクリームなどの乳製品を全国に販売。- 先代は当初「リスクが大きい」と難色を示したが、試験導入後に好調な売上を得てからは協力体制に転じた。
- 後継者会議“若手会”の設置
同世代の従業員や地元の若手農家とも定期的に勉強会を行い、外部の知見や他産業の技術を取り入れる仕組みを作る。これによって従業員が「後継者=新社長を一緒に支えよう」という意識を育てることに成功した。
失敗リスクと克服
- 大規模投資が必要な観光施設の拡張は、資金繰りや地域住民との協議が難航する恐れがあった。
- しかし、宮崎県の観光推進事業や地方銀行の補助・融資をうまく活用し、段階的に規模を拡大。後継者が地元コミュニティに丁寧に説明を続けたことで、反対意見を最小限に抑えた。
地域・企業へのインパクト
- 観光客が増加し、地域全体への経済波及効果が見込まれる。
- 都城産牛乳やアイスクリームのブランド力が高まり、農産物や関連加工品の売上も伸びる。
- 後継者本人が「親からの継承」と「外部で学んだ経営スキル」を組み合わせた事例として、他の農業・観光業者の参考事例となっている。
参考
- 宮崎県観光協会の地域活性化レポート
- 地元紙(宮崎日日新聞)、地方経済誌の特集記事
- 高千穂牧場公式サイト
5. 失敗の危機から再起した例:某木工メーカー(匿名事例)
企業概要
- 所在地:山形県内(仮名:Y市)
- 業種:木製家具・建具の製造・販売
- 創業:昭和初期
後継者育成の失敗と混乱
- 後継者が“やる気なし”のまま急任命
創業家の長男が都市部の大手企業に就職していたが、父親の体調不良で急遽Uターン。本人は乗り気でなかったものの「長男だから」という理由で社長就任が決まる。- 社内の幹部や古参社員からも「急すぎる」と不満が噴出。
- 経営を主導するのは父親の側近たちで、後継者が実権を持てず、“名ばかり社長”と陰口を叩かれた。
- 不十分な財務対策と親族間対立
先代の株式管理があいまいで、叔父や伯母など親族が株をバラバラに持っていたことが後に判明。経営方針をめぐり親族同士で対立が深刻化し、取引銀行からも不信感を抱かれ資金繰りが悪化。 - 外部環境変化への対応の遅れ
他県の大手家具メーカーが最新設備で低コスト高品質の商品を続々と投入。Y市の木工メーカーは手作業中心だったが、後継者が意思決定する前に資金不足で設備投資ができず、業績低迷に拍車がかかる。
再起への道
- 地元商工会・信用金庫が仲裁
親族間の対立を解消するため、地元の商工会が株式譲渡計画を助言、信用金庫が条件付き融資で再建を後押し。 - 後継者が外部セミナー・大学院で再教育
後継者自身が「このままではまずい」と一念発起し、中小企業診断士や地元大学院の社会人講座で経営や財務の基礎を学び直す。 - ファミリービジネスコンサルタントの活用
親族を集めた「家族会議」を定期的に開催し、株式や経営権を整理しつつ、後継者が実質的に経営決定できるように体制を再構築。幹部社員とも改めて協力関係を結び直す。
現在の状況
- 業績が徐々に回復し、地元の公共施設向け家具受注などで黒字化に成功。
- 新製品として“手作り家具の高付加価値路線”を打ち出し、県外の百貨店やECサイトに展開を拡大。
- 後継者本人も「当時は失敗しかけたが、外部の力や家族会議の設置が救いになった」と述べているという。
参考
- 商工会議所の事例紹介資料(企業名非公開)
- 地元紙の匿名特集記事「家業承継の明暗」(2021年頃)
7.まとめ:具体事例から見える「後継者育成の極意」
- キッコーマン や 星野リゾート のように、早い段階から“外部経験”や“グローバル視点”を盛り込み、後継者を総合的に育てるケースでは組織的な成長を遂げやすい。
- ヤマト醤油味噌 や 高千穂牧場 のように、“守る部分”と“変える部分”を明確にしつつ段階的承継を行うことで、社内外の理解と信頼を得ながら改革を進める手法が有効。
- 一方、失敗しかけたY市の木工メーカー事例では「後継者本人のモチベーションや専門知識不足」「親族間の株式・権限調整を怠った」ことが大きな混乱を招いたが、最終的に外部支援やファミリービジネスの専門家を活用することで再起できた。
これらからわかるのは、後継者育成・事業承継には「計画的準備」「周囲のサポート」「後継者の主体性」「外部リソース活用」が不可欠ということです。今後ますます増える事業承継の局面において、成功事例・失敗事例の両方から学びを得ることが、家業や中小企業が生き残り、さらには大きく飛躍するためのカギとなるでしょう。
8. 参考文献・ソース一覧
- 中小企業庁
- 『中小企業白書2022年版』
- 『事業承継ガイドライン』
- 日本ファミリービジネス学会
- 学会誌・研究発表資料(家族内承継における紛争事例、後継者育成施策の効果検証)
- 経営学関連論文・書籍
- 遠藤功 著『成功する事業承継の条件』(東洋経済新報社)
- ファミリービジネス研究者による海外事例分析(ハーバード・ビジネス・レビュー等)
- その他
- 商工会議所主催の「後継者育成塾」受講生アンケート
- 地方銀行協会の地方企業向け事業承継支援事例
- 経済産業省『事業再構築補助金』関連資料
-
URLをコピーしました!